物語の読解について
私にとって、物語を見る/読むことは、主人公に身を委ねることだ。その間だけは自分を忘れていられる。
他には、漫画や映像作品は、アングルはどうか、テンポはどうか、この演出意図は何か、作画はどうか、といった表面的なところに視点が行きやすい。
それはそれで構わない。それも作品を構成する要素である。だが、物語の本筋が頭に入ってこないのが困る。要は物語を客観視できないのだ。
まず登場人物の顔と名前が一致しない。その時点で誰が何をしたのかが理解できなくなる。各話に別れている作品で、だんだんと覚えられるようになったとしても、やはり感情移入が強すぎて主観的なものの見方になってしまう。
覚えられない点については複数回見ることで補えるが、主観から脱するのはとても難しい。画面の表面的なところを見られるのなら、筋書きの表面も見られそうなものだが、そうはいかないのがもどかしい。
これはもう訓練を積むしかないのだろう。自分で自分に国語の問題を作れば、ある程度理解できるようになるのではないだろうか。
そうなると、どんな問題を作ればいいのかが課題となる。
まずあらすじは必須だろう。次に、もっと細かく、何が起こったのかを確認する必要がありそうだ。誰が何をして、その結果何が起こったのか。その登場人物は何を考え、何を感じたのか。
まず感情面だが、上記を元に、最近見た映画を反芻して考えてみたが、どうも理解できない。確かに非道なことはなされているが、落ち込むことはない。せいぜい、可哀想だ、くらいで止まってしまう。何が違うのだろうか。
私は、非常に感情移入しやすい質だ。それは人の感情をトレースするようなもので、だからその人が悲しければ私も悲しい。その人が傷つけば、私も苦しくなる。ときには想像上の相手の反応に呼応することさえある。
ここでふと思い出したのだが、Fate/zeroを視聴したときは、切嗣の絶望に共感しすぎて寝込んだエピソードがある。
これを踏まえて考えれば、ゲゲゲの謎はあえてアクションシーンを交え、また視聴者に分かりやすく悪玉へのヘイトを向けさせ、視聴後の感覚をスッキリしたものにしているのではないか、と思える。
そう考えれば、確かに陰惨なことは起こっていたけど、落ち込む程ではない、という感想になってもおかしくはないだろう。
次に作品のテーマ、全体を通して伝えたいことだ。何が起こったか、ではなく、何が言いたいか、である。これは全体に散りばめられていることが多い気がするので、似ている要素を繋ぎ合わせる必要があるだろう。
これが難しい。複数回視聴したものならばある程度見当はつくが、初見では分かった例がない。
不滅のあなたへ、辺りなら同じ構造が繰り返されるから、さすがの私でも理解できた。アンナチュラルやMIU404もなんとなく分かる。一話完結ものは分かりやすい。
いや、そもそも、全体を通してのメッセージが無い場合も考えられるのではないか。エピソードごとの主張はあっても、傾向の近いメッセージの寄せ集めで、全く同じものが長期的に語られることは無い、という可能性も考えられる。
それならば、分からないのも当然だ。そもそも対象が存在していないのだから。
ただ同時に、一本の作品にテーマが二つ三つと重なっている場合も考えられるだろう。この場合は、一つ分かっただけで満足せず、さらに探っていく作業が必要だ。
そしてもうひとつ理解を深める手段に、他作品との比較がある。共通項を見つけ、そこからその差異を探る。そしてその作品の特色を見出していく。
あくまで仮説だが、おそらくこうして物語を読解していくのだろう。なるほどね。