作り物はいつか壊れる

 自分がかわいいあまりに他者を傷つけてしまった。それならば、自分なんかを愛さなければよかったとさえ思う。
 ……なんて言うのは簡単だ。
 他者なんてどうでもいいと思っている奴が何を言っているのだろう。私は他者に優しくしているポオズをとっているだけだ。(それを優しい人と言うのかもしれないが)
 だが、愛しているふりだけは、よくなかったなと思う。結局「他者を愛する自分」を愛していただけで、そのツケがあれだったのだろう。

 私にとって愛が責任だったのは、すなわち他者と関わった責任だ。どうでもいいと思っているからこそ、それを義務として、責任を負うことにしたのだ。
 つくづく、〝人間〟のふりをしているな、と思う。私の思い描く〝人間〟は、他者に興味を持ち、純粋に他者を愛する。もちろん、そうでない人間がいることも分かっている。分かっているが、私はそうなってはならないという義務感がある。そういう在り方の人を否定したい訳ではない。私が、普通に、大多数に固執しているだけだ。
 親からは、よく、普通が一番だと言われた。だからだろうか。自分がどうやら普通ではないらしいと気がついた頃から、普通であることは義務となった。
 私が「女も男も関係ない」と言ったとき、親は「博愛だね」と言った。そんなものではない。私は男女で分けることに意味を見出せないくらい、他者に関心がないだけだ。他者など皆へのへのもへじなのだ。
 愛されたから、愛を返す。それには無理があった。〝べき〟に縛られた愛など、いつかは限界を迎えると知った。

 ということを考えていたら、付き合っていると勘違いされ、私が冷たい態度を取ったら相手が怒ってしまう夢を見た。